先日、昨年末に合意がなされたTPP「環太平洋パートナーシップ」が2月に署名され、いよいよ本格的に始動するときが近づいてきた。本トピックスではTPPを活用した中小企業の海外展開について、外部環境や、TPPによってもたらされる物品市場以外の規制緩和等を紹介していく。また、2016年1月末に公募が開始された、中小機構の「TPPを活用した海外ビジネス戦略支援事業」(助成金事業)について紹介する。

先日、昨年末に合意がなされたTPP「環太平洋パートナーシップ」が2月に署名され、いよいよ本格的に始動するときが近づいてきた。
メディアでは、TPPは農作物や工業製品中心に取り上げられているため、それ以外の項目に関してはあまり知られていないのが実態ではないか。実際は物品市場以外にも、サービス貿易、例えばコンビニや投資、知的財産に関係する様々な分野がTPPの条約の中には含まれている。
また、TPPは従来の2国間で結ばれるEPA「経済連携協定」やFTA「自由貿易協定」とは違い、参加国12か国間においての条約になる。簡単に言うと、EPAやFTAの広域化されたものがTPPとなる。
さらにTPPでは中小・中堅企業や地域の産業をフォローできるよう、ウェブサイトや小委員会を設置することが盛り込まれている。現在はまだ情報の整備中で、問合せ窓口も限定されているが、H28年度にはより多くの情報を手に入れやすい環境が整ってくる。

アジア太平洋地域の成長を、自社の海外展開に取り込む


図1JETRO資料を元にセンシングアジア加工
※2015年合意、2016年署名済み ※TPP以外の協定は現在全て交渉中

2国間で結ばれるEPAやFTAと違い、TPPは複数国間での協定となる。近年のEPAやFTAでは既に物品の関税・非関税障壁、サービス貿易、投資、政府調達、人の移動、知的財産など幅広い分野を対象としているが、TPPでは複数国間において「幅広い分野で21世紀型のルールを構築」を目指している。知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境なども加わり、これまで以上に幅広い分野や品目で、海外企業が日本市場に参入しやすくなる可能性があると同時に、日本企業の海外進出の余地も広がることになる。
また、TPP以外にも日本を取り巻く、様々な複数国間で結ばれるメガ協定が検討中である。(図1)例えばRCEP「東アジア地域包括的経済連携」は昨年の合意が見送られたが、2016年内の合意に向けて検討は進んでいる。また、TPP以外の協定に関してはTPPの合意の経過を様子見しているとも言われ、TPPが合意された今、そのほかの協定もより一層交渉が進むことが見込まれる。

この図1に記載のTPP、日中韓FTA、RCEP、日EU EPAが全て実行されると、その経済規模は世界のGDPの約80%と想定されるほど、大きな影響を持っている。まずはTPPが一歩進んでいる形になるが、TPPだけでも世界のGDPの約40%を占める規模と言われている。TPPは、アジア太平洋地域の経済発展を、企業の成長エンジンに取り込む戦略機会となり得る。

物品市場以外の市場アクセスの透明性が向上

農業製品や工業製品は様々なところで情報がまとめられているので、ここでは、それ以外のサービス貿易、投資、政府調達などを中心に紹介する。まだ各国の詳細情報が精査されている段階であるが、いくつか日本企業にとって朗報となる業種がある。
例えば昨年にASEANでコンビニや小売店(スーパーなど)の進出がよく報道されていたが、TPPによりベトナムとマレーシアでは該当業種における参入障壁が緩和、クール・ジャパン推進の目玉となっているコンテンツ輸出に関しても文化関連規制の緩和も含まれている。

※内閣官房TPP政府対策本部資料(2015年10月)より一部抜粋

サービス貿易、投資分野での緩和例

ベトナム
  • TPP発効後5年の猶予期間を得て、コンビニ、スーパーなどの小売り流通業の出店について、ベトナム全土においての「経済需要テスト(Economic Needs Test*)」を廃止
  • 劇場、ライブハウスなど娯楽サービスの外資規制緩和(現行上限49%→51%)、国内映画優先指定の緩和

マレーシア
  • 小売業(コンビニ)への外資規制の緩和(コンビニへの外資規制禁止→出資上限30%)の他、小売業の諸手続きが緩和され、透明性も向上

カナダ
  • オンラインで提供される外国の音響映像コンテンツに対して規制を設けない

※詳細に関しては条文レベルで調べる必要がある。

TPP問合せ先※一部抜粋

1. JETRO TPP相談窓口
本部(東京) 電話:03-3582-5651
https://www.jetro.go.jp/theme/wto-fta/tpp/contact.html

2. 中小機構 TPP相談窓口
関東本部 販路開拓部 国際化支援課 電話:03-3433-1087
http://www.smrj.go.jp/kikou/dbps_data/_material_/g_0_kikou/press/kanto/20151106_tpp.pdf

助成金を活用して海外展開を加速させる

2016年1月末に、中小機構よりTPPを活用した海外ビジネス戦略推進支援事業(F/S支援を含む)の公募が開始された。(http://www.smrj.go.jp/keiei/kokusai/fs/069550.html
本補助金事業の補助上限は300万円となり、対象となるものは市場調査費、翻訳・通訳費、旅費、海外取引実施を目的としたWeb作成費用等の2/3の費用となっている。
弊社では本補助金対象事業への応募サポートも行っておりますので、興味のある方は以下の問合せ先までご連絡ください。

問合せ先

センシングアジア事務局へメールでご希望をお伝えください。後日、弊社よりご連絡差し上げます。
contact@sensingasia.com


参考
特に以下のようなニーズのある企業は、本補助金対象事業の対象となる。

  • 自社の海外展開計画を検証したい
  • 実際の進出候補地で自社製品などのマーケットや生産拠点の投資環境などを整備したい
  • 自社単独で調査するには現地の情報や言語に不安がある

Source: 日本経済新聞、JETRO、中小機構、外務省ウェブサイト等より

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