多様なアセアンか、閉じたアセアンか「国境閉鎖下の多様性デザイン」「グローバルマネジメントの国境」(日本マーケティング協会 Marketing Horizon 2021年2月号への弊社代表松風の寄稿、取材原稿を元に抜粋)

コロナによる経済減速、国境封鎖をきっかけに、多様性を成長のパワーとしてきたASEANが変わりつつある。

元々ASEANは異なる所得構造や発展度合い、多様な文化、宗教、人種を包含し、地域として補完しあって成長してきた。さらに、モノ、ヒト、サービスの域内自由化を推進し、ヒトの面では短期滞在ビザ撤廃が実現され、またモノの面でも関税のみならず陸路インフラの整備も進められてきた。

ただ、失業率の低下は、自国民を優先させる政府施策となり、外国人雇用のハードルとコストが上がっている。一方、今まで人の多様化が難しかったインドネシアでは、昨年、経済回復を目指したオムニバス法案が可決された。これは外国資本や外国人を受け入れやすくする側面もあるが、それに反発するインドネシア人の反政府デモが広がっている。

企業に目を向けると、リモートワークの拡大、リモートでの会議やオペレーションを可能にするテクノロジーの採用により、タイやシンガポールに多く置かれている日系あるいは外資企業の地域統括会社はその意義を見直し始めている。

ASEAN各国のJetroが直近で行った調査では、実際15%~20%の企業が“駐在員を削減し、人財現地化を既に行った、あるいはこれから行う”とある。ローカル市場を顧客にする販社には知見が溜まるものの、各国の保護主義政策の元、海外駐在員への風当たりは強い。企業本体におけるグローバル化を想定し、海外駐在はグローバル人財育成の場としても機能していたが、こうした人財多様化への取組は停滞するのだろうか?

例を見ない規模のパンデミックは、移動の自由を前提としたグローバル化を一瞬で阻み、さらに経済後退に喘ぐ各国を、物理的にも心理的にも“閉じる”方向へ向かわせている。

企業活動の前提条件が大きく変わる中、本特集では、1)グローバルマネジメントの今後、2)人財多様化の今後、3)さらに多様な価値観を企業の活力とし続けるためのヒント、を探ることを目的とし、ASEANに拠点を置く、様々な企業やプロフェッショナルの視点、そして取組や模索を紹介していく。

物理的には“閉じたASEAN”、あるいは脱グローバル化という方向性を受け入れながら、ヒトとして“開いていく”あるいは、“多様な価値観を自ら創造する力”、“共感力”が企業のリーダーに求められている。

さらにASEANといった域や域内各国のマネジメント、海外ガバナンスの枠組み自体も、上記の方向性を前提に見直していく必要がある。

国際部門や海外ビジネスに関わる方々、あるいはASEANに拠点を持つ企業の方々の参考になれば幸いに思う。

「多様なアセアンか、閉じたアセアンか」トピックス

1. 国境閉鎖下の多様性デザイン

パンデミックによる経済減速、国境封鎖をきっかけに、多様性を成長のパワーとしてきたアセアンが変わりつつある。当地でビジネスをする外資企業の経営にも変化が求められている。今回から2回にわたり、グローバルマネジメントの今後を考えていく。初回は人財マネジメントの課題と今後の道筋について、Merver(Singapore)のパートナー、Mehra氏への取材を紹介する。

詳細はこちら

2. グローバルマネジメントの国境

パンデミックによる経済減速、国境封鎖をきっかけに、多様性を成長のパワーとしてきたアセアンが変わりつつある。グローバルマネジメントの今後を考える2回目は、弊社代表松風がシンガポール経営メンバーでもある、日系飲料企業を例に、アセアンでの企業マネジメントの“今”を取り上げる。

詳細はこちら

※日本マーケティング協会 Marketing Horizon 2021年2月号への弊社代表松風の寄稿、取材原稿を元に抜粋